【氷輪王】アネモネ
アネモネは、代々「氷硝」を守護するニブルヘイム家に生まれた、第二皇女である。大陸において、物理的、また精神的な支柱でもある「氷硝」と呼ばれる巨大な結晶。加護を受けた者であれば、その力を分け与えられ、自在に操る事も出来る。そして、こと氷硝を操る手並において、かつてアネモネは第一皇女すらをも凌ぐ実力を持ち、強く将来を期待されていた。しかし、それゆえか。更なる氷の真実へ触れようとした彼女は、加護もろともに、未来を喪った。
【氷花王】フリージア
街を、或いは大陸すらも支える「氷硝」。唯一無二たるその結晶を護るため、王族たるニブルヘイム家は存在する。第三皇女たるフリージアも幼少の頃よりそのように定められてきた。だが彼女はいまだ「氷硝」を、自在に扱い切れてはいない。無論、王族としてその恥は、今まで隠し通されてきた。しかしこれより半年ののち、「氷硝祭」は開かれる。どう足掻いても逃げ道は無い。秘密が必ず守られかつ、腕が確かな氷硝の師を、フリージアは早急に見つけ出さねばならなかった。
【氷晶王】ジヴル
寄る人混みに圧されつつ、その「氷硝」に覆われた都市をジヴルは一人歩いていた。或いは、背中に其れを友と呼ぶなら一人と一匹と言っても差し支えはない。ともあれ故郷を離れて早二月。ようやく辿り着いた初めてにして大陸唯一の街。見るもの全てが新鮮であり、ゆえに周りの人混みが、彼らを避けて通る事にも彼は気付いていなかった。ともすれば、その無知こそがジヴルの「幸福」になり得たかもしれない。しかしそののち彼は知を得、表裏を成した「不幸」へと至る。
【氷硝王】ジヴル
街での暮らしも一月ほどが経ち、故郷と異なる冷気にも、ジヴルと背中の友人は、随分馴染み始めていた。勿論それ相応に、生まれ故郷の特質ゆえ、良からぬ視線が向く事も多いが、こと「氷硝」を操る手並において、今や彼の右手に出るものはおらず、やはりそれ相応には良き注目も浴びていた。そんな或る日、彼が開いた工房の戸を、粗暴に叩く音が響く。慌て、ジヴルが開いた戸の先、其処には険しき顔でこちらを睨む、この街、或いはこの国の、第三皇女の姿が在った。
【氷凛王】アネモネ
非の打ち所の無い優秀な姉。非を打ち続ける可憐な妹。絵に描いたような個性の狭間で、アネモネは王族としての執務をこなしていた。無論、体は酷使出来ぬが、それでも持ち前の器量の良さは民衆からの賞賛を受けている。そんなある日、彼女は第三皇女たる妹が、或る街工房へ入り浸っているという噂を耳にする。真面目で器量良く、しかし生来、万事に首を突っ込みたがるアネモネは、噂の真相を確かめるべく、子供の頃から変わらない悪戯企むその笑顔で、独自の調査を開始した。
【氷華王】フリージア
まるで持つはずの無い熱を持つよう。フリージアは、その冷たさに触れそう思った。漂う冷気はそれだけで肌を灼くかのごとく熱い。氷が象る橋の上、氷竜族の生き残りたる彼は、或いは背に負う彼の友は、身の内に秘む怒りを込め、眼下に広がる巨大な街を冷たい視線で見下していた。やがて街を覆う氷硝が、歪に形を変え始める。街の誰もが見たことも無い、唯一彼女のみ知るその異形。幼き頃に封じた記憶と、今眼前の違わぬ其れ。願いは叶わず想いだけが、やがてその手の剣に乗る。
アネモネは、代々「氷硝」を守護するニブルヘイム家に生まれた、第二皇女である。大陸において、物理的、また精神的な支柱でもある「氷硝」と呼ばれる巨大な結晶。加護を受けた者であれば、その力を分け与えられ、自在に操る事も出来る。そして、こと氷硝を操る手並において、かつてアネモネは第一皇女すらをも凌ぐ実力を持ち、強く将来を期待されていた。しかし、それゆえか。更なる氷の真実へ触れようとした彼女は、加護もろともに、未来を喪った。
【氷花王】フリージア
街を、或いは大陸すらも支える「氷硝」。唯一無二たるその結晶を護るため、王族たるニブルヘイム家は存在する。第三皇女たるフリージアも幼少の頃よりそのように定められてきた。だが彼女はいまだ「氷硝」を、自在に扱い切れてはいない。無論、王族としてその恥は、今まで隠し通されてきた。しかしこれより半年ののち、「氷硝祭」は開かれる。どう足掻いても逃げ道は無い。秘密が必ず守られかつ、腕が確かな氷硝の師を、フリージアは早急に見つけ出さねばならなかった。
【氷晶王】ジヴル
寄る人混みに圧されつつ、その「氷硝」に覆われた都市をジヴルは一人歩いていた。或いは、背中に其れを友と呼ぶなら一人と一匹と言っても差し支えはない。ともあれ故郷を離れて早二月。ようやく辿り着いた初めてにして大陸唯一の街。見るもの全てが新鮮であり、ゆえに周りの人混みが、彼らを避けて通る事にも彼は気付いていなかった。ともすれば、その無知こそがジヴルの「幸福」になり得たかもしれない。しかしそののち彼は知を得、表裏を成した「不幸」へと至る。
【氷硝王】ジヴル
街での暮らしも一月ほどが経ち、故郷と異なる冷気にも、ジヴルと背中の友人は、随分馴染み始めていた。勿論それ相応に、生まれ故郷の特質ゆえ、良からぬ視線が向く事も多いが、こと「氷硝」を操る手並において、今や彼の右手に出るものはおらず、やはりそれ相応には良き注目も浴びていた。そんな或る日、彼が開いた工房の戸を、粗暴に叩く音が響く。慌て、ジヴルが開いた戸の先、其処には険しき顔でこちらを睨む、この街、或いはこの国の、第三皇女の姿が在った。
【氷凛王】アネモネ
非の打ち所の無い優秀な姉。非を打ち続ける可憐な妹。絵に描いたような個性の狭間で、アネモネは王族としての執務をこなしていた。無論、体は酷使出来ぬが、それでも持ち前の器量の良さは民衆からの賞賛を受けている。そんなある日、彼女は第三皇女たる妹が、或る街工房へ入り浸っているという噂を耳にする。真面目で器量良く、しかし生来、万事に首を突っ込みたがるアネモネは、噂の真相を確かめるべく、子供の頃から変わらない悪戯企むその笑顔で、独自の調査を開始した。
【氷華王】フリージア
まるで持つはずの無い熱を持つよう。フリージアは、その冷たさに触れそう思った。漂う冷気はそれだけで肌を灼くかのごとく熱い。氷が象る橋の上、氷竜族の生き残りたる彼は、或いは背に負う彼の友は、身の内に秘む怒りを込め、眼下に広がる巨大な街を冷たい視線で見下していた。やがて街を覆う氷硝が、歪に形を変え始める。街の誰もが見たことも無い、唯一彼女のみ知るその異形。幼き頃に封じた記憶と、今眼前の違わぬ其れ。願いは叶わず想いだけが、やがてその手の剣に乗る。