【探偵王】ベルモント
ベルモントは、すこぶる極めて頭が良い。彼の元には事あるごとに事件の調査依頼が舞い込み、彼はその都度その知能をもってして、数々の難事件を解決してきた。王妃マリアンヌ誘拐事件、黒霧城殺人事件、ガリムア男爵毒殺事件。あらゆる全ての事件にて、必ず犯人を突き止めてきた彼であったが、しかし必ずしもそれが「真なる真実」であるとは限らなかった。
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【過水王】ワトソン
雪の降る朝。ワトソンはその年27回目の引っ越し作業を、一人黙々と行っていた。正確にはかれの次の下宿先はまだ決まっておらず、しかし部屋を空け渡す期限は今日その日であり、即ち途方に暮れながらの、宛の無い荷造りであった。役にも立たず、売れもせず、異音、騒音、異臭、異水、それらを放つ発明の数々を台車に載せて彼は歩く。と、風に吹かれてちらしが一枚、足元に辿り着いた。其れを拾い上げたワトソンは、思わずその年28回目の、歓喜の声を上げていた。

【管理王】ハルル
-下宿人募集中-
以下の条件に当てはまる方であれば、
どなたでも格安にて受け入れさせて頂きます。

・聴くに耐え難い楽器演奏を、絶対に行わない方
・へんてこりんな生き物を決して連れ込まない方
・下宿部屋での火薬の使用、及び発砲を控える方
・慎み深く、他の下宿人と良好な関係が築ける方
                           以上
ベイル街771B

【騒仕王】ハルル
その下宿には様々な者が住んでいる。砂漠の酒場から流れてきたいつも陽気な元・踊り子。やたらと大きな荷物を持つ、白い帽子が可愛らしい碧髪碧眼の少女。この世の下宿人が「良」と「悪」とに分けられるのなら、彼女たちはまず文句なしに「良」に類する者たちである。即ち残りの男二人。偏屈極まる天才探偵、並びに自称水性発明家こそ、この世における下宿人の、最たる「悪」に類する者たちである。と、ハルルは強く確信している、出来れば早く追い出したい。

【禍水王】ワトソン
ワトソンは自身の発明に難癖をつけるその探偵が心底嫌いであった。否、深夜のド下手な楽器演奏、或いは異臭を放つ生物培養。それらは全て怒りすら溜めるに十分過ぎる事案であった。そしてある夜、それは爆発する。事もあろうか探偵が住む隣の部屋から銃弾二発が撃ち込まれたのだ。怒り震えるワトソン。だが、勇み探偵の部屋へと乗り込むと、其処には銃を向けられ、しかし澄まして手を挙げる探偵の姿。即ちこれが二人の最初の事件。「黒霧城殺人事件」、その幕開けであった。

【偽真王】ベルモント
ベルモントの元に事件のあらましが伝えられると、彼はおおよそ二秒ほどでその事件の真相に辿り着く。そして彼は組み替えてしまう。塵一つもの矛盾も無く、真実は、彼の思い描く「幸福な真実」へとすり替えられる。優しき犯人は犯人で無くなり、許されざる傍観者が犯人となる。人の定めた法だけで、善と悪とを量る術にはなり得ない。そしてその信念は、彼が偽る最後の事件「老竜王殺害事件」にて、幕を下ろす。
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【犯罪王】モリィ
モリィはその手で「事件」を創る。証拠も、凶器も、犯人も、そして動機すらも造り上げ、それらが一つの悲劇を生む。彼の描いた筋書きに決して誰も逆らえず、その手の上でなすがままに、あるがままに、当事者という役者たちは、自らの役を演じきる。被害者役は被害者を、証人役は証人を、犯人役は犯人を、そして探偵役は探偵を。しかしそんな彼の手の上に、決して乗らぬ者が居る。ベイル街、下宿に住まうその探偵こそ、いつか悲痛を刻むべき、モリィの「宿敵」であった。

【叛罪王】モリィ
「悲劇」の幕間。小雨が降る中傘をさし、モリィは笑顔を浮かべていた。その小さな背中を煌々と、燃える炎が照らし上げる。或いは同時に赤々と、傘もささずに雨に打たれ、炎を見上げるその探偵が照らされる。ベイル街771B。窓は灼け割れ、花壇の花は熱に溶け、小奇麗だった下宿は今、大火に包まれ燃えていた。無論、「役者」の手によって。そして幕は、モリィの創る最後の事件、百八人の探偵が招かれる「老竜王殺害事件」へと進む。